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ことばの質問箱 R.O. 2019年4月号

Lingva Demandokesto ことばの質問箱 横山裕之編 <24><25>

◆質問 人称代名詞は?
 複数形の語尾は-j ですが、人称代名詞ni, vi, ili などは-j を付けて作らないのはなぜですか。エスペラントに例外なしとのことですが、人称代名詞は例外ではないですか。

●回答 ni はmi の複数形ではありません。『われわれ』というのは『私 mi』がおおぜいいるというのではなく、mi kaj vi またはmikaj ili などの意味です。よってni はmi の複数形ではなく別な意味で、当然j を付けて作るのではありません。
(上記の質問・回答はRevuo Orienta 誌1922 年10 月号の「質疑応答」という無署名記事の一つを、現代かな・漢字表記、口語化して掲載したものです)

◆質問 一音一字?
 エスペラントの説明で「一音一字」ということを聞きます。しかし、日本語の「カ」という一音をエスペラントではka と二文字で表しています。これでは、「一音二字」ではないでしょうか。

●回答 これは「音(おん)」とは何か、のとらえ方によります。
 日本語で「俳句は五七五音からなる」というときの「音」では確かに「カ」は一音ですね。しかし別のとらえ方もあります。
 日本語の「ア」という一音はエスペラントでは「a」と一文字です。このア行の音、ア・イ・ウ・エ・オの五つは、エスペラントでは各々a・i・u・e・o となりますが、これらの音は、口の開き方をそのままで、「アーー」(aaa)、「イーー」(iii)のように延ばせます。このような音を「母ぼ 音いん」といいます。
 一方「 カ」を延ばしてみてください。「カーー」(kaaa) と、延ばすと、後の方は「アーー」の後ろの方と同じです。「カ」の時、最初に一瞬、舌と喉が動きます。この一瞬の部分(k) を一つの音ととらえていて、「子し 音いん」といいます。カ・キ・ク・ケ・コの時の舌と喉の動きが共通です。そして、これらをka・ki・ku・ke・ko と書きます。このように「 母音」と「子音」を区別し、各々を別の音とするとらえ方があります。マ・ミ・ム・メ・モ(ma・mi・mu・me・mo) なら最初のくちびるの動きが共通で、このm が子音です。
 この「母音」「子音」の各々を「音」と考えるとらえ方は、特にアルファベットを文字とする地域で優勢で、この方が世界的にも多いのです。
 しかしそれならアルファベットを使う他の言語(英語、フランス語、ロシア語・・・)では、「一音一字」ではないのでしょうか。多くはそうですが、英語を例にとると、「s」の字は、音としてはエスペラントのs 音、z 音の両方があり、二音一字です(実はもっと多くの音がありますが)。あるいは「x」の字をks とかgz とか、二つの連続した子音で発音することもあり、これも二音(連続)一字といえます。一方英語の「sh」の字の組は、音ではエスペラントのŝ の音となり、一音二字です。ドイツ語では「sch」がŝ の音で、一音三字ですこのように、必ずしも「一音一字」が徹底していない言語が多いのに対して、エスペラントの売り文句が「一音一字」です。
 なお、言語学に詳しい方は、日本語では「一音節一字」、エスペラントでは「一音素一字」と覚えてください。
(本件、別に良い説明方法をご存じの方は編集部にお教えください)

【La Revuo Orienta誌 2019年4月号より】

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