エスペラントでインターネット




青山 徹

Japana Esperanto-Instituto/Ponto-libroj 3



最近はインターネットのホームページにもエスペラントに関するものが ずいぶん増えてきました。また,エスペラントの活動にもインターネットは大変役に 立っており、その活用方法にも幅が広がってきました。

そもそもインターネットとは?,ホームページで学習、ホームページで実用, 電子メール,ファイル転送,ネットニュース,メーリングリスト,メールマガジン, コンピュータとエスペラント文字など,インターネットとエスペラントについて 幅広く基礎的な解説を行います。

著者は元銀行員。1959年独学でエスペラントを学習,のち 横浜国立大学エスペラント研究会に入会,1963年目黒エスペラント会設立に参加, 1967 年京都緑星会に。その後,転勤にともない,吹田,練馬など各地の エスペラント運動に積極的に係わられてこられた実践家です。
1996年には,目黒区から 文化運動に対し,功労賞を受け,現在は,練馬などのエスペラント会, (財)日本エスペラント学会,世界エスペラント協会に加盟,日本エスペラント学会で はボランティアとしても活躍されています。

インターネットって?

インターネットは「ネットワークのネットワーク」といわれ, 世界中のコンピュータ・ネットワークを相互につないでいます。 どこかのネットワークの ID(アドレス)を持っていれば, インターネットで結ばれたネットに加盟している誰とでも通信できます。 今までとは異なる新しいメディアといえます。

このようにインターネットは世界のネットワークですから, 通信するには言葉が問題になります。エスペラントは使う人が多くないとはいえ, 世界中で通用し ますから,まさにエスペラントはインターネットにうってつけ, といえます。現に,私もいろいろ利用していますが,こんなに便利なものはありません。 エスペラント界では結構利用されています。ちなみに検索ソフトのGoogleで 「エスペラント」と検索すると38,400件が, “esperanto” で検索すると,日本語では19,500件,海外では2,650,000件もが出てきました。

インターネットというと,「ホワイトハウス」とか「官邸」とかのホームページを 思いつきますが,実際にはその他に「電子メール」,「ファイル転送」, 「メーリングリスト」等があります。この各々の機能でどう使われているか, 次に見てみましょう。

ホームページで学習

ネットワーク上にあるさまざまな情報をページをめくるように 世界中の人が見ることができるのがホームページです。 この情報には字や絵・写真,また最近は 音・動画なども含まれています。 今までの無味乾燥な電子文書と異なり,分かりやすくなったため, 最近,爆発的に普及してきました。

前に書きましたように,日本語だけでもとても目を通しきれないほどです。 そこで,まずどこから始めたらよいかですが, とりあえず http://www.jei.or.jp/ から始めたら良いと思います。 これは(財)日本エスペラント学会のホームページで,ここからいろいろの所に行けます。

いろいろの言葉でエスペラントのページを見てみたいという人は まず http://www.esperanto.net/ へ行って下さい。ここと結ばれている62言語の 先へ行けるようになっています。 先に紹介した(財)日本エスペラント学会のホームページからは 「ネットワーカーに贈るエスペラント語入門」というところへ行けますが, これを使えば本がなくても自習できます。 エスペラント学習ソフト(無料)を使って,E-mailで答案を提出することも 出来ます。

エスペラント関係のページを次々と見ていくと,この言語のことから歴史, 利用状況などほとんど分かります。「エスペラント・日本語」の15,000語の 「電子単語帳」などもホームページからダウンロードできますので,辞書代わりになります。

ホームページで実用

これらのページはエスペラント自身についてのホームページが多いのですが, 他にエスペラントを純粋に世界への発信の手段として使っているものもあります。 例えば,泉橋酒造は「日本の酒」について,真宗大谷派は「不戦決議」を, 大本は布教のために,また日本のマッサージ師は「湧命法マッサージ」の宣伝に, というようにこの言葉を利用しています。また,横浜の野鳥,近代漢方医学, 環境監視センター,地方ロータリークラブの紹介・活動状況の広報などにも エスペラントが活用されています。さらに http://gxangalo.com では最新の世界のニュースがエスペラントで読めます。

電子メール

今でも手紙による国際文通というのは結構盛んです。しかし,電子メールを使えば, 瞬時に安く通信できます。以前,ブラジルの人がわが家に来ましたが,ま だ宿泊などの打合せが終わらないうちに, 韓国,中国に向けてブラジルを出発してしまいました。 彼は両国の友人宅に泊まりましたが,いずれの友人もIDを 持っていましたので,行く先々でそのIDを使って私とメールで打合せをし, 無事成田から私の家に着きました。このように短時日の間に打合せができたのも 電子メールならではないかと思います。

また,イタリア語から派生した言葉で,早急に調べたいことがありましたが, エスペランティストのネット電話帳(イエローページ)でIDを探し,あるイタリア人に 電子メールで質問したら,翌日には返事が来て,助かったことがあります。 学習している時に分からないことは講師なりに電子メールでたずねることもできます。

また,最近は委員会などの討議にも利用しています。みんなが集まる必要はありません。 (財)日本エスペラント学会のホームページを立ち上げる時も電子 メールを利用して内容の検討などを行いました。

また,先に紹介した「電子単語帳」を作った時もメールを利用しました。 担当者が入力した原稿はそのまま使え,17人で1年で完成しました。2005年1月に出版の 『ザメンホフ通り』は67人が翻訳を分担し,メールを使って短期間に完成させました。また,メーリングリストにより,情報を共有しました。 メールの威力絶大です。世界エスペラント協会の年鑑には都市・専門代表者の住所,電話が載っていますが,最近はIDも記載されるようになりました。

ファイル転送

これはいろいろのデータの貯蔵庫のようなもので,ホームページを見ていて,当該場所をクリックすると,このファイル転送サイトから,データを取ってきます。 フォントとかいろいろなプログラム,データなどが一般的です。上記のイエローページもファイル転送で入手できます。このイエローページには97カ国 2,200人と700の国際組織のIDが記載されていますので,大抵の国には使えます。 また,最近はReal Playerなどのツールを使ってコンピュータで音も聞けます。 エスペラントのポーランド放送などをこの方法で聞くことができます。なお,日本で聞きや すい短波のエスペラント放送は中国国際放送だけですが(毎日,1時間放送しています), ヨーロッパでは毎日,このポーランド放送を始め,いくつかのエスペラント放送を 聞くことができます。

ネットニュース

世界中の人が書き込める電子掲示板がネットニュースです。 このネットニュースの中に soc.culture.esperanto というボード(掲示板) があり,ここではエスペラントが中心に使われています。 この soc.culture. はエスペラントのボードの他に世界中の国の名が並んでいます。その ボードではその国の言葉が主に使われるため,その国の人が中心になってしまいます。 一方,エスペラントのボードだけはそれこそいろいろな国の人が参加 し,討論しています。 東欧を中心にした話題などは日本の新聞ではあまり報道されませんが, 実際はいろいろなことが起こっているのが分かります。

メーリングリストとメールマガジン

上記のネットニュースと並行して,最近はメーリングリストが盛んになってきました。 これは電子メールを使った会議形式・情報配信システムで,メーリング リストのアドレス宛に送ったメールは参加者全員に送られます。エスペラント関係でも多数存在し,遠距離会議の進行や,すばやい情報伝達に寄与していま す。

又,メールマガジンという定期的に配信される電子雑誌が最近はもてはやされていますが,もちろんエスペラント界にもあります。無料で配信されています。

コンピュータとエスペラント文字

エスペラントにはいくつかの独特の文字があります。例えばcの上に^が付いた文字などです。今まではインターネット上でこれらの文字を正しく表示するの は難しかったのですが,最近はユニコードなどで表示できます。また,最近のコンピュータにはエスペラント文字のフォントが入っているので,設定さえすれ ば,手紙にも会報にもエスペラント文字で表記できます。このように,技術の進歩につれていろいろの障害も無くなりつつあります。

結び

以上のように,世界中を結ぶインターネットには中立で,比較的易しく,表現性にも富むエスペラントがうってつけです。上記のように実際にいろいろの分野 で使われてもいます。エスペラントを使っている人はぜひインターネットを,またインターネットの使える人はぜひエスペラントを使ってあなたの活動分野を 広げて下さい。
ポント双書3(改訂版)
エスペラントでインターネット