「エスペラント / La Revuo Orienta」 1997年1月号掲載

ヨーロッパ語だから世界共通語として不向きではないか

「エスペラントはヨーロッパ語だ」と断定はできません。

まず、言語の構造から見ると、 (英・独・仏・露など)「ヨーロッパ語」は「屈折語」です。 これは、 「語形全体や語尾の変化によって文法的な働きを表すような種類の言語」 (「岩波国語辞典」)です。 いっぽう、エスペラントは 語根に接辞や語尾を添加する方式で、 各要素の形にはまったく変化がありません。 つまり、エスペラントは「屈折語」ではなく、 日本語や中国語のような「膠着語」または「孤立語」に似ているのです。

ただ、語彙については、エスペラントは、たしかに「ヨーロッパ語」です。 というのは、基礎となる語根のほとんどすべてが、 ラテン系を中心にヨーロッパの主要言語に由来しているからです。 これは、創始者ザメンホフが「共通語」を考案する際に、 諸民族が混在する東欧という環境で、 ヨーロッパ共通の文化的伝統を考慮に入れた結果です。

質問の背後には、 「『世界共通語』は、公平の原則に基づいて世界中の言語から その長所を採り入れたものであるべきだ」 という主張が存在するように思われます。 しかし、そういうことは、事実上不可能です。 英語と中国語と日本語とアラビア語の「長所」を 寄せ集めてできたコトバなどは、 まさに混沌そのもので、実用に耐えないでしょう。 妥当な代案のない限り、 「共通語」は やはり エスペラントしかありえないのです。

(水野義明)


これは 「Revuo Orienta (1997年1月号)」の特集記事からの抜粋です。 コメントや問い合わせは 「日本エスペラント学会 ウェブ管理人」宛でお願いします。

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