「エスペラント / La La Revuo Orienta」 1997年1月号掲載

エスペラントとは何か

エスペラントは、なによりもまず「ことば」である。 100年をこえる実用の歴史がこのことを証明している。 話し手の多少を問わず、どの民族語も調和のとれた美しい体系であるように、 エスペラントもことばとして調和のとれた体系である。 また、日本語や英語を大切に思う人がたくさんいるのと同じように、 エスペラントを「自分のことば」として大切に思う人もたくさんいる。

しかし、民族語と同じ機能を持った「ことば」であると同時に、 人間が知性の光をあてて磨き上げた国際共通(補助)語として、 ほかにない特徴がエスペラントにはある。

学習者を悩ます不規則や例外ができるかぎり捨てられているので、 比較的短期間の努力で、このことばの本質にいたることができる。

エスペラントを学習し実用する過程で、 私たちは地球的な規模で物事を見る新しい視点を獲得する。

言語と文化の多様性は人類の宝である。 だが、現状はその宝を、戦争や経済的な圧迫と屈従がむしばんでいる。 ほかの民族を自分たちの支配下に置くのではなく、 たがいに尊敬しあうことを目指すのが 21世紀をむかえる私たちの進路だとすれば、 地球的な規模でものごとを見る公平な視点と、 対等なコミュニケーションを可能にする中立言語が不可欠である。 エスペラントが民族語を廃止し言語を統一するもの、という 根拠のない誤解がまだ根強いが、 その反対に、エスペラントは 言語と文化の多様性を断固として守る「橋わたしのことば」である。

(藤巻謙一)


これは 「Revuo Orienta (1997年1月号)」の特集記事からの抜粋です。 コメントや問い合わせは 「日本エスペラント学会 ウェブ管理人」宛でお願いします。

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